乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
『延ばすかよ。・・・こんなとこで怠けてられねぇからな』

「榊はナマケてんじゃなくて、療・養・中!弾キズ!ふつうのケガと一緒にしてどーすんのよ」

『飯も食えて動けりゃどうってことねぇよ。・・・真、若頭(かしら)に言え、もう十分だ俺は』

「あとニ週間ガマンな。宮子もオレも、俊哉を置いてどこにも行かねーし、待ってんだからさ」

『・・・・・・・・・』

あ。黙った。

ベッドの上でただ、もどかしさと闘う気持ちを誰より知ってる真の言葉は、薬より染みて榊に届いたかもしれない。

『臼井』

「うん、なに?」

『悪かったな。・・・誕生日』

ぼそっと低く。“悪かったな”に色んな意味が込められてる気がした。

あんたが台無しにしたんじゃないのに。ちゃんとバースデイコールくれて、律義でマジメで、ほんとはカタギが向いてたのに。

「倍返し、期待してるから」

『おう』

分かってて意地悪く言えば、素っ気ないひとつ返事。

「榊の退院待ちでイベント渋滞してるし、息切れしないよーにパワーアップしといてよ?」

『・・・おう』

うんざりと、観念したあいのこみたいなトーンで返った。

いつもの榊がそこにいて、戻ってき始めた日常に自然とほころぶあたしがいて。

「宮子、風呂はいろ」

通話の切れたスマホを渡した手を引っ張られ、真がキスを盗む。ここからが本番、て甘い顔してる。
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