乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
バスタブの中で愛しい男と熱に浮かされる。濡れそぼって、熔ける。

「・・・宮子」

切なく名前を呼ばれるたび吐息をついばむ、啄まれる。ワルツを踏むみたいなキスに押し上げられる。敏感なところを探られ、何度も押し上げられる。

「愛してる」

耳元で、背中で、頭の上で、目が合って、ささやかれる。一年分くらい。

ハチミツ漬けにされたままお風呂から上がって、後からベッドに沈むとすぐ、真の腕が巻き付いた。

「俊哉が戻ったらオマエが行きたいトコ、どこでも連れてくよ。買い物でも映画でもなんでも」

愛情が青天井な、とことん優しいダンナさま。

「オレに好きなだけわがまま言って?」

ひと月近くあたしを家に閉じ込めてるのはオレだ・・・って悔やんでる?自分が甘かったせいで、こんな目に遭わせたって悔やんでる?真に償ってほしいなんてこれっぽちも思ってないよ? 

「子供みたいに甘やかすなって、おばあちゃんに叱られても助けないからね?」

冗談めかして受け流す。・・・ねぇ真、あたしはね。

「そのくらい大姐さんも大目に見てくれる」

かもしれない。今のあたしは、人生で一度きりの晴れ舞台を血塗れにされた不憫なお嬢。・・・でもね。
< 34 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop