乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
滅多にそろわない顔ぶれで、榊の快気祝いなのにあたしが励まされてる。気がする。・・・・・・あれ?もしかして。

「明太乗せ大根のカルパッチョ風と、アスパラと生ハムの春巻きっスけど」

「シアワセすぎますよ、亞莉栖で藤さんのゴハンが食べられるなんて!」

相変わらずラフな格好の藤さんが次のオードブルを運んでくれ、頭の隅で浮かんだことがすっかり飛んだ。

「雪緒と高雄がツラ合わせてんだ、ついでに秋生(トキオ)も呼んじまえ」

「・・・ねーって」

シノブさんの耳に届いたか、ボソッと低く漏らし、戻ってく藤さんの背中がうんざりして見えた。

聞き覚えがない名前にあたしが首を捻ったのを、当の本人は料理をつまみながら事もなげに言う。

「ミヤコはコイツらの妹、知らねぇのか」

「ユキちゃん、妹いたの?!」

「うちの末っ子なのよ。しばらく会ってないわねぇ」

カウンターの向こうからニッコリ。初耳。ていうか、またあたしだけ仲間外れなパターン?!

「そのうちチヨちゃんに紹介することもあるかしら」

「・・・その時は、三の組(こちら)の跡目も挨拶させていただきますので」

「あ、いえっ、はい、ありがとうゴザイマス」

相澤さんに静かに目礼されて散らかった返事になった。

不意で驚きもあった。二の組の跡目はとっくにシノブさんで決まってる。でも三の組の話は哲っちゃんでさえしない。
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