乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
三の組は元から臼井の分家で、昔は領地の管理を手伝ってもらってたらしい。ひいおじいちゃんが一ツ橋組を(おこ)したとき、手伝いの延長で組の看板を掲げたんだとか。

たしか組長が不在で、跡目が継いだら相澤さんも正式に若頭になるって、前に真から聞いた。組長のイスを空けたままの三の組を代理として引っ張ってきたのは、思ってたより深い事情があったのかな。

このひとの口から紡がれた言葉がなんていうか、自分を認めてくれてるみたいでお腹の底がきゅっと引き締まった。背筋が伸びた。

お酒も進んで上機嫌なシノブさんの武勇伝話につき合い、切りのいいとこでカウンターに引き上げた。仁兄と甲斐さんはいつの間にか隅のテーブル席に移って密談中だ。

「おかえり」

笑った真の目の周りがちょっとだけ赤らんでる。機嫌よさげ。いいよ?今夜は好きなだけ酔っ払って。

「こんなに賑やかなのも久しぶりなのよ」

ユキちゃんがあたしの前にカシスソーダを置いてくれる。

「三人そろってるのを見てると、嬉しくって涙が出ちゃうわね」

「亞莉栖に来たの一ヶ月半ぶりくらい?もう七月だもんねぇ。すっごく長かった気もするし、んーでもやっぱり長かった、・・・かなぁ」

「トシヤ君もマコトちゃんもチヨちゃんも、よく頑張ったわ。・・・本当に偉かったね」

男口調に変わったユキちゃんの淡い笑み。
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