乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
いつの間にか。ビンの底からのぞいてる小っちゃい空しか、・・・自分の気持ちしか、見てなかったかもしれない。独りよがりになってたかもしれない。織江さんにだけじゃなく、真にも榊にも。

「・・・ごめん。そうする」

反省の息を逃してから、スマホに目を落としてる藤さんに声をかけた。

「今度はあたしから誘ってもいいですか?」

「・・・あとでリスケして連絡する」

「すみません、ありがとうございます・・・!」

結城(ゆうき)の面倒みるついでなんで、べつに半病人は来なくていーけど」

さらっと返った。ものすごく分かりやすい日本語しか使わない人間が、シノブさんの他にもいたの忘れてた。

思わず左隣りを見上げ心ん中で叫ぶ。誤解しないでよ?藤さんはあんたを心配して言ってんの、ケンカ売ってるわけじゃないからね?!

「・・・俺の仕事なんで」

怒ってるでもなく、無表情の榊はやっぱり譲らなかった。

『何度でも盾になります』

あの時の姿が重なった。なにかが込み上げてきたのをぐっと飲み下した。わざと大袈裟に呆れてみせた。

「全くもう。藤さんに甘えてもいいのに」

「くどい」

「うわ。ユキちゃん聞いた?うちの不良息子、最近ちょっと反抗期なんですけどー!」

「あら兄妹喧嘩?」

クスクス笑いでユキちゃんが。

「骨になる前に止めてあげるから、とことんやっていいのよ。だって相手を分かりたくてするものでしょ?」
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