乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「小難しいこと考えてもキリねぇって言ったろうが。どうにもならねぇ時は俺に泣きつきゃいい、どうにかしてやるぜ」

あたしや真を姪っ子甥っ子みたいに可愛がってくれるシノブさん。気に入らなかったら本家にも平気で楯突(たてつ)くし、『頑張れや』って励ましてくれることはあっても、『手を貸す』って言ってくれたのは初めてだったと思う。

「この命は宮子お嬢さんの役に立たせる約束でしたので・・・必ず果たします」

淡く口の端を緩ませ、静かに目礼した相澤さん。そんなに恩義を感じてもらうほどのことはしてないのに、いつもいつもあたしを気に懸けてくれて。

もっと気の利いたお礼が言いたかったけど、胸がつまって「ありがとうございます」って頭下げるのが精いっぱい。

主役は榊のはずが、これじゃ臼井宮子が励まされる会。・・・もしかしなくても、仕掛け人はやっぱりユキちゃんかな。

迎えが来て二人減り三人減り、藤さんを見送ってあたし達も西沢さん待ち。片付けを手伝いながら、カウンター越しにユキちゃんへお礼を言った。

「あら、何かしたかしら?」

「相澤さんとシノブさん、何かあったら助ける・・・って。それを言いに来てくれたのかなって。ユキちゃんが呼んでくれたんでしょ?」

「誘っただけよ」

手元を動かしたまま涼しそうに。

「二人が宮子お嬢をどう思って、なにを伝えるかまではね」
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