乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
しっかり宮子。榊は絶対死なない、あたしを置いてくわけない!!

チェストの上に置いてあったスマホとショルダーバッグをつかんで、足早に玄関へ。

「真さんと必ずあの子を連れ戻しておいでなさい。ふたりにしか出来ないことですよ」

決して取り乱したりしないけど、心配してわざわざ見送りに出てきたおばあちゃんは毅然と諭し、あたしの背中を押してくれた。

車の後部シートで、ダークグレーの三つ揃いに真珠色のネクタイを決めた哲っちゃんに肩を抱かれながら、ただ願い続ける。神サマになんかじゃない、榊に。

ねぇ届いてる?
あたしの声きこえる?

嘘つきになんないでよ。
あたしを泣かせないでよ。

あたしの命、半分あげるから
榊のいうこと何でも聞くから、
たまには言うこと聞きなさいよ・・・っっ。

『        』

瞼の裏で、仏頂面の男がぶっきらぼうに何か言ったけど。

風に浚われたみたいにこっちまで届かなかった・・・・・・。




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