乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
ボリューミーなベーグルサンドをかじりながら、藤さんのスパルタな保父さんぶりや、世界を何周もしそうな由里子さんの話に花を咲かせ。お尻に根っこが張らないうちに、最上階のフロアからショップを回遊する。

「車椅子だと真が一緒に入れないとこ、けっこう多いんですよねぇ。だからこういうとこはあんまり。友達とブラブラ買い物するのもほんとに何年ぶりって感じです」

「わたしも渉さんに会うまでは何でもひとりだったし、『どっちが似合う?』ってちょっと羨ましかったの」

「分かります、榊なんて『どっちでもいい』しか言わないですもん!」

あたし達の前を歩く黒スーツの背中にわざと聞かせた。

榊と離れずの距離を取ってるもう一人は、甲斐さんの舎弟の(すみ)さん。ひとつかふたつ歳上で榊も真も気心が知れてる人。眼を見ればだいたい分かる、場数踏んでるかどうかくらいは。

ちなみに後衛は、藤さん厳選のボディガードがついて来てるはずで。榊が無理しなくたって全然ヘーキなんだから。

「宮子さん、この雑貨屋さんすごく素敵・・・!」

足を止めた彼女の横顔が一段と輝いた。和の小物を集めたお店らしく、店頭で釘付けな織江さんと別々に端からゆっくり鑑賞してく。

うさぎの形したお手玉とか飾ったら可愛い、こっちの真ん丸な招き猫も。けど!真は全っっ然キョーミないんだよねぇぇぇ。

「結城さんならともかく、君もこういうの好きなの?やっぱり女の子だな」
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