乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
「ごめんね、心配させて。榊の言ったことはたぶん分かるんだけど、ハイそーですかなんて納得できないよ。だからもう一回ちゃんと話つけるね」

「決めたのなら遠慮しないでぶつかってらっしゃい。長い連れ合いでもそんな時はあるでしょ。大丈夫、二人が壊れるはずないわ」

ワケを話さなくてもママはあれこれ詮索しない。気持ちに寄り添ってやんわり背中を押してくれる。

『とことんやっていいのよ。だって相手を分かりたくてするものでしょ?』

ふいにユキちゃんの笑い顔が重なった。

「どうしてもどうにもなんなかったら、哲っちゃんとママに甘えるかも」

「あら、宮子ちゃんを甘やかすのは哲司さんの生き甲斐よ?」

悪戯っぽく笑んだママと顔を見合わせ、あたしも釣られた。

「そう言えば織江さんは変わりない?今日はあの可愛らしいお嬢さん達も一緒?」

「ううん、椿ちゃん達は藤さんが保父さんしてくれて。藤さんてやっぱり、なんでも出来るとこがユキちゃんの弟だよねぇ」

思い返しながら話してるうちに、なんだか急に瞼が重くなる。そろそろ部屋に戻ろっかな。・・・言えたのかも曖昧で。

「ゆっくりお休みなさい宮子ちゃん。朝が来るたび楽しいことだけ残ったら、どんなに幸せかしらね・・・」

ママの寂しそうな声も夢かうつつか。意識が吸い込まれてく。

榊の背中が一瞬浮かんで、リモコンを切ったみたいにぷつんと記憶が途切れてた・・・・・・。



< 63 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop