乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
3-2
微睡みから半分醒めないまま寝返りを打つ。おでこが何かに当たって、ぼんやり瞼をこじ開けた。

「おはよ宮子」

「・・・はよぅ」

ずいぶん上から降ってきたイケボイスと、髪を撫でてくれる指先。どうやらおでこは、ベッドの上に半身起こした真の太腿に命中したらしい。

「ゆうべ帰ったら宮子がテーブルで爆睡しててさ。仁兄に運んでもらったの憶えてる?」

「ぜんぜんきおくにない・・・」

「ダンナの名前は?」

「まこと」

「ん、合格」

「???」

「起きよっか奥さん」

大きく伸びをしてヘッドボードのスマホをつかみ取る。ホーム画面の時刻表示は8時43分。遊佐家の朝ご飯はだいたい8時頃だから、けっこう寝坊した。

真のあとをついて一緒にシャワーを浴びてから、リビングに顔を出す。

「よく眠れたか」

ソファで新聞を読んでた浴衣の哲っちゃんが顔を上げ、口の端を緩めた。

「俺が一生お前といてやるから、安心してどこでも寝ぼけてかまわねぇぞ?」

その向かいからシャツ姿の仁兄が不敵そうに。

「えーと、肉体労働させてごめんね仁兄。お礼に一個だけ、なんでも言うこときく」

「もう少し色つけろと言いたいとこだが、まあいい。忘れるなよ?」

そう言って結局、あたしが喜びそうなとこに連れてかれたり。
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