乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
モニターが三台並んだワークデスクから、ゲーミングチェアごとゆっくり振り返った真は、アイドル顔の仮面を崩しもしないで綺麗に笑う。

「どした?」

こうなるのを最初から腹に据えて用意してたように笑う。

さっきまですっごく口惜しかった。仁兄も哲っちゃんも見くびらないでよ、って。真の時みたいにあたしがまた、自分を責めて責めて壊れるのを心配した?でもね。

「榊、どうしたの?定期検査なんてウソだよね?」

矢継ぎ早に口から飛び出す。

「倒れたってなに?あたしに言わないって、なんなの?」

「死んでも宮子に言うなって俊哉に口止めされてた」

仁王立ちしたあたしを真っ直ぐ射貫く眼差し。

あの頑固男の背中が幻になって浮かぶ。なんでこっち見ないの?あんたらしくない、なんで逃げんのよ!

「だからって・・・!!のけ者にされたあたしの気持ち、真にはわかんないでしょ?!知らないほうがシアワセなんて勝手に決めないでよねっっ」

抑えきれずにぶちまける。目頭に熱が染みる。鼻の奥がいたい。真のせいじゃない、誰も悪くない。理屈は飲み込めてた。

良いこともそうじゃないことも三等分だったわけじゃない。面倒な荷物は真と榊が余分に背負ってくれてた。自分がどんだけ甘やかされてたか、千も承知。
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