乞い果てて君と ~愛は、つらぬく主義につき。Ⅲ~
でも生きてる。
生きようとしてる。
あんたが負けないって信じてる、
みんな。

「榊の分は取っとかないからね?口惜しかったら早く起きてよっ」

意地悪くあっかんべーすると、イスを持ってきてこれ見よがしにベッド脇で、うな重をいただく。・・・あ。ほっぺた落ちた。

院長先生の計らいで(狭いけど)個室にしてもらえたから、ほぼ毎日いても、何してても、他人の目がないのは気が楽。あとはほら、スーツ着たヤ〇ザ風な人達がたまに出入りしてもね?

返事は返ってこないけど絶対聞こえてるはずだから。勝手に話しかけながら、お米を一粒も残さないで相澤さんに感謝。残りは真と哲っちゃん達へお土産かな。

ペットボトルのお茶をひと口、ふた口。ピクリとも動かない榊の顔をじっと見つめる。

襲撃犯が隠し持ってた銃が小型だったのと、扱いが素人で命拾いした。後ろから左寄りに肩と腰のあたりを撃たれて、プロならあの距離で急所は外さないし、あたしも無傷じゃいられなかった。

あんたが全力で守ってくれたから、ちょっとアザ作ったくらいで済んだ。あんたがいなかったら、今ごろあの世でお母さん探しの旅してた。

「・・・ありがと榊。『ゴメン』は言わない約束だもんね」

あたしをかばった真が右足を轢かれた事故の記憶が巻き戻される。あの雨の暗さも、のしかかった真の重みも、昨日のことみたいにまざまざと。
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