【移行予定】擬似的なシンメトリー
「わたし、涼くんに話があるの」
「話? そういや、なんであんなとこにいた?」
「涼くんを探してたんだよ。目撃情報を見てね」
「目撃?」
わたしはSNSで「相良恭平 遭遇」と調べて出てきた投稿を涼くんに見せた。
「相良恭平。恭くんの芸名。涼くんも知ってるよね?」
ぴくりと涼くんの眉が動く。
「恭くんはS地区に行ってないから、この目撃情報は双子の涼くんだと思ったの。それで涼くんに会えないかなって」
「で? なんで俺に会う必要あんの?」
「この目撃情報のせいで恭くんの芸能生活に暗雲が立ちこめてる。涼くんがこのままケンカばっかしてると、恭くんは芸能界をやめないといけなくなるかもしれない」
〝いつか、この人がいればなんでもおもしろくなるって言われる役者になりたい〟
それが、小さな頃から人の幸せな笑顔を見るのが好きだった恭くんの夢。
映画の試写会で演技の世界に惹かれ、演技で人を笑顔にしたいという恭くんの夢をわたしは近くで応援してきた。
同い年なのに揺るぎない絶対を持っている恭くんがわたしには眩しくて、たまに自分が小さく見えることもあったけれど、彼を追いかけることがわたしの夢になった。
恭くんの夢を守りたい。
恭くんの夢はわたしが守る。
「涼くんは涼くんの思うとおりに生きたらいいと思う。けど、人に迷惑かけても平気な生き方はしないで」