【移行予定】擬似的なシンメトリー

どうして今、名前で呼ぶの?

いじわるで自分勝手で気分屋で。でも、わたしの心配ばかりして、優しくするときは「絢音」と名前を呼んでずっとそばにいる。

こんなことをされているのに、昔の涼くんを思い出して心を預けてしまいたくなる。



涼くんの唇がわたしの口を離れて、頬、首、鎖骨へと落ちていった。


「涼くん、やめて……っ」


わたしの声が届いていないのか、壊れたおもちゃみたいに動き続ける涼くん。

シャツの裾に手をかけたとき、部屋のチャイムがわたしたちの耳を貫いた。

涼くんが動きをとめる。


「ちっ」

と、舌打ちをしたかと思うと、わたしの腕をとって立ち上がった。

そのまま玄関まで引っ張るようにして連れていき、ドアを開けようとする。


「涼くん」

「もう二度と来るな」


そうしてドアを開けた先には女の子が立っていた。

同い年くらいの女の子で、インナーを紫に染めた長い髪をハーフツインテールにし、胸元にハート型の穴が空いた黒いブラウスを着ている。


「よっ、涼花(すーか)

< 14 / 47 >

この作品をシェア

pagetop