【移行予定】擬似的なシンメトリー
どうして今、名前で呼ぶの?
いじわるで自分勝手で気分屋で。でも、わたしの心配ばかりして、優しくするときは「絢音」と名前を呼んでずっとそばにいる。
こんなことをされているのに、昔の涼くんを思い出して心を預けてしまいたくなる。
涼くんの唇がわたしの口を離れて、頬、首、鎖骨へと落ちていった。
「涼くん、やめて……っ」
わたしの声が届いていないのか、壊れたおもちゃみたいに動き続ける涼くん。
シャツの裾に手をかけたとき、部屋のチャイムがわたしたちの耳を貫いた。
涼くんが動きをとめる。
「ちっ」
と、舌打ちをしたかと思うと、わたしの腕をとって立ち上がった。
そのまま玄関まで引っ張るようにして連れていき、ドアを開けようとする。
「涼くん」
「もう二度と来るな」
そうしてドアを開けた先には女の子が立っていた。
同い年くらいの女の子で、インナーを紫に染めた長い髪をハーフツインテールにし、胸元にハート型の穴が空いた黒いブラウスを着ている。
「よっ、涼花」