【移行予定】擬似的なシンメトリー
彼女は涼くんに手を挙げて挨拶した後、わたしに気づいて顰め面を見せた。
「だれそいつ」
「なんでもねぇよ」
出ていけと、口では言わなかったけど涼くんに背中を押され、そう言いたいのだと察した。
わたしが出るのと入れ違いにして、その女の子が部屋に入りドアが閉じられた。
涼くんはわたしに教えたかったのかもしれない。
ノコノコと家にやってきたら、こうなるよと。
説得できなかった。恭くん、わたしはどうすればいい?
一番星が輝く空を見上げながら恭くんの笑った顔を思い浮かべて、また涙が出そうになった。