【移行予定】擬似的なシンメトリー
*涼花*
『恭くん、すごいすごい!……いてっ。涼くん、なにするの。髪引っ張らないでよ』
『こら涼花。好きな子いじめちゃダメだよ』
『バカ! ちげーよ』
絢音は昔から事あるごとに「恭くん恭くん」と言い、恭花ばかりを見て、恭花にだけ「すごい」を連発する。
同じ双子でも恭花だけを特別扱いする絢音が許せなくて、いじわるばかりしていた。
我ながらガキだとは思ったけど、そうすることでしか絢音の隣にいられない気がした。
「今日は来ないね、綾音ちゃん」
「人の幼なじみを気軽にちゃん付けしてんじゃねぇよ」
「ちっちゃいなー涼花は。別に好きなわけじゃないんだろ。ならオレに譲ってよ」
「やだよ」
もともと俺のもんでもないけど、という言葉は飲み込んだ。
「それにしても、本当に来ないね」
家に連れ戻そうと絢音が俺の前に現れるようになって数日、毎日来ていたのに今日はまだ来ていない。
あいつは人を振り回す天才だ。
人の女を寝取ったとか身に覚えのない因縁をつけられてボコボコにされ、今日の夕飯はどうしようかと考えているときに急に目の前に現れた。