【移行予定】擬似的なシンメトリー
裏路地をひとつ折れた先で、ふたりの男とひとりの女を発見した。
男のひとりが女を壁に押しつけて口を塞ぎ、ブラウスの中に手を入れようとしている。
残りのひとりはそのようすを収めようとスマホを掲げている。
その男たちが俺に因縁をつけてきたゴリラとゴボウだとわかったのはすべて事が済んだ後で、女が絢音だとわかった瞬間に俺は理性をぶっ飛ばして男たちに殴りかかっていた。
「涼くん! もうやめて! この人たち、死んじゃう」
絢音に抱きつかれてはっとしたとき、俺の足元には顔の原型を留めていない男たちが転がっていた。
「絢音……」
「わたしは大丈夫だから。まだなにもされてないから」
なにが大丈夫だよ。俺の胴に回す手がめちゃくちゃ震えてるじゃねぇか。
振り返ると、絢音は俺から離れた。
「本当になにもされてない?」
「うん、されてない。わたし、前にこの人たちに涼くんの彼女だって嘘ついたことがあって、そしたらさっきばったり出くわして。ここに連れ込まれたんだけど、すぐに涼くんが助けにきてくれた」
ありがとう。俺の目を見てはっきりとそう言った絢音から、俺は目を逸らした。