【移行予定】擬似的なシンメトリー




五十嵐宅のインターホンを鳴らすと、「はいはーい」と恭くんが出てきた。


「この時間に来るの久しぶりだね。……涼花!?」


恭くんはわたしひとりだけだと思ったのか、後ろに立つ涼くんを見て目を丸くした。


「涼くんを連れてきました。今、おばさんたちは?」

「父さんだけいるけど……。連れてきたってどうやって?」

「うーんと、根気?」

「……ん? 絢音、なんか元気ない?」

「えっ」


恭くんが心配そうにわたしを見てくる。

ちらっと振り返ると、涼くんは決まりが悪そうな顔をしていた。


「ううん、元気だよ。それより上がっていい?」

「あ、うん。そうだね」


恭くんに招かれて家に上がろうとしたら、涼くんが佇んだままそこを動こうとしないことに気がついた。

男たちに襲われそうになったところを涼くんが助けてくれた後、涼くんに「一緒に家に帰ろう」と言ったら、なにも言わずにわたしのあとをついてきてくれた。

けどやっぱり、再婚相手がいる家には帰りたくないらしい。


「ごめん恭くん。今日は涼くん、わたしの家に泊めるね」

「え?……そうだね、頼もうかな。涼花、絢音たちに迷惑かけるなよ」


恭くんも涼くんの気持ちを察したらしく、わたしの提案をなにも聞かずに受け入れてくれた。

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