【移行予定】擬似的なシンメトリー

「絢音」


部屋を出ていこうとしたら、涼くんに呼びとめられた。


「今日、一緒に寝る?」

「えっ?」

「怖いの我慢してるだろ。ひとりでいるのが怖いなら、俺がそばにいる。もう勝手に手を出したりしないから」


涼くんは静かな間、ずっとそんなことを考えていたのだろうか。

まっすぐに見つめてくるその瞳にはもう、昨日までの涼くんの姿はないように思う。


「ありがとう。気づいてくれたんだね。でも、大丈夫だよ。今日はお母さんのベッドで一緒に寝かせてもらうから」


涼くんは昔からいじわるで、心にもないことを言って誤魔化そうとする。

でも、昔からだれよりも早くわたしの気持ちに気づいてくれて、気遣ってくれた。


見た目は変わっても、涼くんに根付いた優しさは変わってないんだなぁ。

< 23 / 47 >

この作品をシェア

pagetop