【移行予定】擬似的なシンメトリー
「絢音」
部屋を出ていこうとしたら、涼くんに呼びとめられた。
「今日、一緒に寝る?」
「えっ?」
「怖いの我慢してるだろ。ひとりでいるのが怖いなら、俺がそばにいる。もう勝手に手を出したりしないから」
涼くんは静かな間、ずっとそんなことを考えていたのだろうか。
まっすぐに見つめてくるその瞳にはもう、昨日までの涼くんの姿はないように思う。
「ありがとう。気づいてくれたんだね。でも、大丈夫だよ。今日はお母さんのベッドで一緒に寝かせてもらうから」
涼くんは昔からいじわるで、心にもないことを言って誤魔化そうとする。
でも、昔からだれよりも早くわたしの気持ちに気づいてくれて、気遣ってくれた。
見た目は変わっても、涼くんに根付いた優しさは変わってないんだなぁ。