【移行予定】擬似的なシンメトリー
◇
わたしは家を飛び出して、隣の家のインターホンを鳴らした。
出てきたのは恭くん。これからお仕事なのかきっちりした洋服を着ている。
「どうしたの?」
「恭くんにちょっと聞きたいことがあるの」
「ごめん。これから仕事なんだ」
「すぐ終わる」
「そう。じゃあ入って」
恭くんに招かれて、昨日は入るのをやめた五十嵐宅にお邪魔する。
おじさんもおばさんも出かけた後なのか家には恭くんだけで、テレビもエアコンも切っているので本当に出る直前らしかった。
「それで聞きたいことって?」
「さっき、僕好きの出演者を見たら相良恭平の名前があって……。恭くん、僕好きに出るの?」
「あー……見ちゃったのか」
恭くんは苦笑いを浮かべた。
「本当なの?」
「うん。マネージャーに言われてね、応募したんだ。絢音には知られたくなかったんだけど、そりゃあ毎シーズン楽しみにしてるから知っちゃうよね」
「どうして教えてくれなかったの?」
「たとえ絢音でも、オーケーが出るまでは言えないよ」
それはわかっているんだけど、事前に「驚かないで」とかのフォローがほしかった。