【移行予定】擬似的なシンメトリー


わたしは家を飛び出して、隣の家のインターホンを鳴らした。

出てきたのは恭くん。これからお仕事なのかきっちりした洋服を着ている。


「どうしたの?」

「恭くんにちょっと聞きたいことがあるの」

「ごめん。これから仕事なんだ」

「すぐ終わる」

「そう。じゃあ入って」


恭くんに招かれて、昨日は入るのをやめた五十嵐宅にお邪魔する。

おじさんもおばさんも出かけた後なのか家には恭くんだけで、テレビもエアコンも切っているので本当に出る直前らしかった。


「それで聞きたいことって?」

「さっき、僕好きの出演者を見たら相良恭平の名前があって……。恭くん、僕好きに出るの?」

「あー……見ちゃったのか」


恭くんは苦笑いを浮かべた。


「本当なの?」

「うん。マネージャーに言われてね、応募したんだ。絢音には知られたくなかったんだけど、そりゃあ毎シーズン楽しみにしてるから知っちゃうよね」

「どうして教えてくれなかったの?」

「たとえ絢音でも、オーケーが出るまでは言えないよ」


それはわかっているんだけど、事前に「驚かないで」とかのフォローがほしかった。

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