【移行予定】擬似的なシンメトリー
こういう番組に出てみたいとか匂わせてほしかった。
情報解禁と同時にでも連絡してほしかった。
「それに、あくまで仕事だから。知名度を上げるために出るんだ。おれはもうそうやって割り切ったから、もし観るつもりなら、絢音もそう割り切って」
「う、うん……」
「じゃあ、おれはもう行かないとだから」
「引き止めてごめんね」
どういう顔をすればいいのかわからないまま恭くんに背を向けてリビングを出ると、廊下に涼くんが立っていた。
「涼花。こんなところでどうしたの?」
「絢音が飛び出していったから何事かと思って追いかけてきた」
「そうなんだ。涼花は今日、なにも予定ないの? それなら絢音をお願い」
「言われなくてもわかってる」
五十嵐宅の前で恭くんを見送ったわたしたちは、柏井宅に戻った。
数分前にいたときよりつまらなく感じるリビングに入ったとき、涼くんがおもむろに口を開いた。
「僕好きってなに?」