【移行予定】擬似的なシンメトリー
姿勢を正してから答える。
「覚えてるよ。恭くんのお父さんとお母さんが離婚したときに一緒に出ていって、たしかおばあちゃんの家にいるんだよね。中二のときだったから……もう三年になるんだ」
「おれはちょくちょく連絡とってたんだけど、二年になってからは一切返事をよこさなくなって」
「そうだったんだ。涼くん、元気にしてるのかな……」
離婚を認められなくて出ていった涼くん。今年の春に恭くんのお母さんが再婚したから、もしかしたら連絡がとれなくなったのはそのせいもあるかもしれない。
「それが……ちょっとこれを見てほしいんだ」
そう言って、恭くんがスマートフォンの画面を見せてきた。
〈相良恭平くんって金髪にした? 遭遇したんだけど〉
〈いま金髪の相良恭平くんと遭遇。しかもS地区で〉
〈#目撃情報。#遭遇。S地区、相良恭平。ヤンキーっぽい男と一緒にいたらしい〉
〈相良恭平と酔っ払いのケンカに遭遇したわ。週刊誌載る?〉
「なにこれ……」
SNSの投稿を読んで絶句した。
相良恭平は恭くんの芸名で、S地区は若者の街と呼ばれている歓楽街。
昼はふつうの街だけど、日が落ちると一気に物騒な街へと変化するので、特に未成年は注意喚起されている。
投稿時間から恭くんが夜の時間帯に目撃されていることがわかった。
「まだそこまで投稿数が多くないから注目されてないけど、このまま放っておくと本当に週刊誌に載るかもしれない」
「そんな……。だってこの目撃情報、恭くんじゃないじゃん」