【移行予定】擬似的なシンメトリー
「……わたし、恭くんのこと好きだったのかな。知らない間に、異性として見ていたのかな」
「気づくの遅ぇよ」
はっとして顔を上げると、涼くんはさっきよりも顔を顰めていた。
「遅いって……」
「俺はずっと知ってたよ」
「なんでわたしでも知らないのに、涼くんが知ってるの」
「見てりゃ気づくよ。だって、明らかに俺への態度と恭花に対する態度が違うんだから」
そんなの、わたし、知らない。
無意識に態度に出るほど、わたしは恭くんのことが前から好きだったんだ。
でも、気づいてしまったらもう恭くんのことは応援できない。
夢を叶えてほしいけど、恭くんが出る番組を純粋な気持ちで見られないよ。
「気づきたくなかったよ。わたし、これからどうすれば……」
「出るなって言えばいいじゃん」
「言えるわけないよ」
「なら本心は隠して、応援するふりすれば」
「それはひどくない?」
「ひどくなくね。こっちにも事情があるんだって思っとけばいい」
涼くんは、あしらっているのか元気づけようとしてくれているのかわからなくて難しい。