【移行予定】擬似的なシンメトリー
まあでも、涼くんになにを言われようと、きっとわたしはこれからも恭くんに応援の言葉をかけて、そのたびに言葉と心の乖離に悩まされて傷ついて、後ろめたく思ってもやっぱり応援を続けるんだろうな。
そんなの、涼くんの言うとおり、応援のふりと変わらない。
せめて、それを恭くんに悟られないようにしないと。
「わたしの事情は内緒にしてね。恭くんに絶対、言わないで」
「言うかよ。俺だって……」
「ん?」
「いやなんでも」
「なによー、気になるじゃん」
「なんでもねぇって」
涼くんは誤魔化すようにわたしの鼻をつまんできた。
そういえばこれ、涼くんの昔の癖だ。
わたしを言葉でからかってばかりいたら、恭くんから「涼花って子どもだね。すぐ口に出して言うのは子どもの証拠だよ」と言われ、それでもわたしをからかいたい涼くんがなんとか編み出した方法がこの鼻をつまむ攻撃。
なんで鼻なのかはわからないけど、当時、ブタ鼻が学校で流行っていたから鼻を狙ったんだと思う。
その後に恭くんから教えてもらったのは、「涼花は絢音に構ってもらいたいだけだよ」と。
つまり鼻をつまむ攻撃は、涼くんなりの照れ隠しなんだ──とわかれば、鼻をつままれるくらいなんてことない。
むしろ、涼くんが可愛くなってくるよ。