【移行予定】擬似的なシンメトリー
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恭くんが僕好きに出ると知ってはや数日が経った。
撮影が始まったのか今まで以上に忙しくする恭くんとここ最近は会えなくて、その一方で涼くんはうちにいてくれるので、おばあちゃん家の問題をどうするか一緒に考えたりとこっちはこっちで忙しくやっている。
近いうちにおばあちゃん家に行かないとね、なんて話していると、わたしのスマホが鳴った。
「……恭くん、どうしたの?」
『絢音、今日は家にいるって言ってたよね』
電話の相手は恭くんだった。
『もし出てこれるなら一緒に映画観ない? 仕事に空き時間ができて、今、映画館に来てるんだけど』
「そうなの? でも、無理だよ」
わたしは恭くんと外では会わない。
芸能人の恭くんがわたしと一緒にいるところを見られてもし変なうわさでも立ったりしたら大変だから、会うときはお互いの家の中と決めている。
『ふたりではね。涼花もいれば大丈夫でしょ』
「あ、そっか」
『涼花に訊いてみて』
「わかった。……うん、うん……じゃあね」
いくつか会話を交わして電話を切った後、お兄ちゃんの部屋で漫画を読んでいる涼くんに訊いてみれば、「どっちでもいい」と言われたので、わたしたちは恭くんが待つ映画館に行くことにした。