【移行予定】擬似的なシンメトリー

「今日は付き合ってくれてありがとう。またね」


映画が終わって、恭くんは次の仕事に向かった。

涼くんは「トイレ行ってくる」と言っていなくなったので、わたしは映画館のエントランスにある椅子に座って涼くんが戻ってくるのをひとりで待つことにした。


エントランスには公開中の映画や公開予定の映画の宣伝ポスターが飾ってある。

その中で、来週に公開が決まっているとあるアクション映画のポスターが目に入った。

複数の男子アイドルグループのメンバーが総出演するファン向けの映画で、ゲスト出演として相良恭平の名前がある。

さらには写真も載っていて、たくさんのアイドルが映っているけど、穴が空くほど見たポスターだからどこに恭くんがいるのかすぐにわかった。


絶対に恋愛が絡まない作品だとわかっているはずなのに、あれすらも観るのが今は怖い。

恭くんに観るって言っちゃったけど……。

なんて沈んだ気持ちでポスターを眺めていると、突然、後ろから肩を掴まれた。

そして、無理やり向きを変えさせられたかと思うと、次の瞬間には左頬に痛みが走っていた。


「……は?」

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