【移行予定】擬似的なシンメトリー
なにが起こったのかわからなくて、困惑が素直に声となって出たわたしの目には、紫のインナーカラーのロングヘアをハーフツインテールにする女の子が映っている。
彼女は、中学のときの修学旅行で見た金剛力士像のような顔をして、一目で怒っているのだとわかった。
「おまえだろ、あたしからすーかを奪ったやつ!」
そう耳元で叫ばれてようやく、わたしは今、この子に頬を叩かれたのだと理解した。
突然の大声に周りにいた人たちがなにごとかとざわざわし始めるが、彼女は周りが見えていないのかわたしに掴みかかってきた。
「あたしのすーかを返せよブス!」
「──痛ッ!」
押し倒されて髪を引っ張られる。
「どこにやったんだよ! 返せよ!」
「やめてよ」
必死に抵抗するが、彼女がわたしに馬乗りになって髪や服を強い力で引っ張ってくるので、彼女の手首をぐっと握ることしかできない。
すると彼女は、注目しろと言わんばかりに手を挙げて、周りにいる人たちに向かって叫んだ。
「みなさん! こいつ誘拐犯です! あたしの男隠してるんです!」
なにを言って──!
「おい真珠、やめろ!」