【移行予定】擬似的なシンメトリー
金髪の部分だけでわかった。
みんなが目撃したのは恭くんじゃなくて、双子の弟の涼くんだ。
最後に並んだふたりを見たのは中三の卒業式のときだけど、小さい頃から両親ですら見分けがつかないほどそっくりだった。
そんな涼くんは家を出ていった後、突然、髪を金色にして登校してきた。先生に注意されても無視して、気づけば不登校に。
卒業式には来たけど、すっかり不良の仲間入りしていた。
それ以来、涼くんとは会っていないけど、この目撃情報たちが涼くんを指し示していることは明白だ。
「涼花に迷惑がかかると思って双子の存在を公表してこなかったけど、このままおれの芸能活動に支障をきたすなら、双子だって公表しようかなと思う。絢音はどう思う?」
「でも、公表したらしたで、今度は涼くんの素行問題で恭くんが責任をとるはめになるかもしれないよね?」
「それは、そうだね。でも、目情を放っておいてもどのみち同じことになるなら、みんなが見たのは双子の弟ですって言うしか……」
「恭くん、待って。わたしに良い考えがあるの。どうにもならなかったら事務所と相談してそうしよう。でも、どうにもならないってなるまで待ってくれる?」
「良い考えって?」
「それは秘密。心配しないで。わたしが恭くんの夢を守るよ!」
「絢音……。ありがとう!」
ガバッと恭くんが抱きついてきた。
突然のことで目が点になる。
「きょ、恭くん……苦しい……」
「あ、ごめん」と離れる恭くん。
「おれ、本当に良い幼なじみを持ったよ」
「うん……」
なぜか胸がずきんと痛んだ。