【移行予定】擬似的なシンメトリー
「どうしたの?」
「いや……」
と、口ごもる涼くん。
言いにくそうにわたしから顔を背けたかと思うと、その顔をわずかに赤面させた。
「あのときはマジでするつもりだった」
「えっ……。言ってることと違うじゃん」
「違ってないから。そのまんまの意味だよ」
「そのまんまって…………えっ?」
いやいやいやそんなまさか、と思う一方で、こっちに視線を戻した涼くんの赤く染まった顔を見たら、そのまさかなんだと頭が理解してしまう。
「いつから……?」
「ガキの頃から」
「でも涼くん、わたしが恭くんを好きって……」
「知ってて好きだったんだよ」
面と向かって好きと言われ、なんて返せばいいかわからなくなった。
ぷっつりと会話が止まって、時間と歩みだけがゆっくりと進んでいく。
「…………」
「…………」
なにか言わなきゃ。
そう思って口を開きかけたところで先に涼くんが沈黙を破った。
「言っとくけど、これは告白じゃないから。なにも言うな。俺は絢音を応援するって決めたし」
「応援?」
「絢音が恭花とどうなりたいのか知らないけど、俺は絢音が決めたことを応援する。心からの応援じゃないだろうけど、後押しくらいはできる」