【移行予定】擬似的なシンメトリー

「もし、絢音が本当に恭花と幼なじみを続けるとして」

「うん」

「俺に望みはある?」


そんな問いかけが届いて、わたしは足を止めて振り返った。

涼くんも立ち止まり、ちょっと距離を置いて向かい合う。


「あるよ。わたしが次にだれを好きになるかわからないし」

「だったら──」


涼くんの視線が横に動いて、なにかを一瞥した。

ちょうどわたしたちが立ち止まっているところは、僕好きの新シリーズスタートを告知する駅ポスターの真正面だった。


「恭花がこれに出てる間、俺たちもふりをしようか」


涼くんのまっすぐな言葉が耳を貫いて、心までクリアな状態でたどり着く。

大きなポスター。涼くんを見ていても視界に入ってくるのに、その一瞬だけ周りの景色が消えたような気がした。


「手繋いだりハグしたり、だっけ? 恭花がすることを俺とすればいい。ちょっとくらい恭花を妬かせて、焦らせて、いつでも応援してくれるわけじゃないって教えてやれよ」

「妬くかなぁ」

「余裕そうに見せて、あいつも所詮は俺と同じだよ」


それ、前にも聞いた。涼くんの恭くん評価は正直、当てにならない。

< 44 / 47 >

この作品をシェア

pagetop