【移行予定】擬似的なシンメトリー
「もし、絢音が本当に恭花と幼なじみを続けるとして」
「うん」
「俺に望みはある?」
そんな問いかけが届いて、わたしは足を止めて振り返った。
涼くんも立ち止まり、ちょっと距離を置いて向かい合う。
「あるよ。わたしが次にだれを好きになるかわからないし」
「だったら──」
涼くんの視線が横に動いて、なにかを一瞥した。
ちょうどわたしたちが立ち止まっているところは、僕好きの新シリーズスタートを告知する駅ポスターの真正面だった。
「恭花がこれに出てる間、俺たちもふりをしようか」
涼くんのまっすぐな言葉が耳を貫いて、心までクリアな状態でたどり着く。
大きなポスター。涼くんを見ていても視界に入ってくるのに、その一瞬だけ周りの景色が消えたような気がした。
「手繋いだりハグしたり、だっけ? 恭花がすることを俺とすればいい。ちょっとくらい恭花を妬かせて、焦らせて、いつでも応援してくれるわけじゃないって教えてやれよ」
「妬くかなぁ」
「余裕そうに見せて、あいつも所詮は俺と同じだよ」
それ、前にも聞いた。涼くんの恭くん評価は正直、当てにならない。