【移行予定】擬似的なシンメトリー
「言いたいことはわかったけど、でも、涼くんはそれでいいの?」
涼くんの提案は自分を利用しろと言っているようなもので、涼くんにはなんのメリットもない。
自分で自分を追い込んでいるとしか思えなくて素直に疑問を呈したら、涼くんが歩み寄ってきた。
不敵な笑みをその口元に作り、わたしの鼻をつまんでくる。
「俺の心配してる場合じゃなくね。俺にとってはむしろチャンスなんだよ。絢音がもう俺しか見えなくなるくらい、ぐちゃぐちゃに溶かしてやる気満々だから」
涼くんの強がりな照れ隠しに、不覚にも胸が疼いた。
さらに、わたしの手をとって歩き出した涼くんの顔が耳まで真っ赤で、ときめくどころか目を奪われてしまった。
〝昔っから恭くん恭くん〟
ふと、前に涼くんから言われた言葉を思い出した。
平等に接していたつもりだったのに涼くんに指摘されたということは、昔からわたしは恭くんばかり見ていたのだろう。
だったらわたしは、すでに涼くんを好きになる方法を知っているかもしれない。