【移行予定】擬似的なシンメトリー
*涼花*
あれは、両親が離婚をするちょっと前のことだった。
サッカー部の友達とだべって帰るのが遅くなった放課後、靴箱で靴を履きかえていると絢音の外靴がまだあることに気づき、友達を先に帰らせて俺だけ教室に戻った。
どうして戻ろうと思ったのかは覚えてないけど、まあたぶん、一緒に帰ってやるかとかそんなことを思ったのだろう。
西日に照らされた放課後の教室には絢音と恭花のふたりが残っていて、絢音は机に伏せるようにして眠っているようだった。
恭花はそんな絢音の向かいに座り、慈しむような目で見つめながら頭を撫でていた。
『絢音。好きだよ』
俺はそのときに初めてふたりが両想いであることを知った。
ぺちんぺちんと、絢音の頬を軽く叩く。
絢音の兄の漫画につい時間も忘れるほど夢中になって、気分転換にと部屋を出たらダイニングテーブルで絢音が眠っていた。
こいつは昔から一度寝るとなかなか起きない。
運んでやるかと腕をつかみ上げたとき、絢音の耳からぽろっとイヤホンが落ちた。
なにを聴いていたんだと思い、それを耳につけると、聞こえてきたのは男の声。どうやらスマホでラジオを聴いていたらしい。