【移行予定】擬似的なシンメトリー
さっそく次の日、わたしは良い考えを実行するために歓楽街に出向いた。
目撃情報を放置するにしろ、涼くんの存在を公表するにしろ、根本的なところで対策をとらないとなんにもならない。
涼くんが危ない街に出入りするかぎり、恭くんに安泰な芸能生活は訪れないのだ。
なら、わたしになにができるかと考えて、思いついたのが、涼くんの更生。
涼くんを三人で仲良くしていた頃に戻す。それがわたしの良い考え。
まあ、〝良い〟は恭くんを安心させるために言っただけで、正直、不安しかない。
昼はふつうの街とはいえ、初めて足を踏み入れるところだし。
涼くんがわたしの言葉を素直に聞いてくれるとは思えないし。
でも、恭くんのため。やるしかない。
わたしは目撃情報を頼りに街を歩き回り、見かけた人がいないか聞いて回った。
しかし、なかなか涼くんは見つからず、気づけば危ない街の片鱗を見せ始めていた。
今日はタイムオーバーかな。また明日、来よう。
「ざまあみろってんだ、涼花のやつ」
「すっきりした。抵抗してこなかったのはもの足りないけど」
帰ろうとしたわたしの足をその会話が止めた。
「あの! 今、涼花って」
思わず声をかけていた。