【移行予定】擬似的なシンメトリー
ふたり組の男で、ひとりは柔道部にいそうな体格のいい男。
もうひとりは、細く長いゴボウのような男だった。
「あ? 涼花? それなら今、ちょうどボコったとこだけど」
「どこにいますか?」
「あんな弱っちいやつよりオレらと遊ぼーぜ」
しまった。ナンパに切り替わっちゃった。
しかも、わたしのほうから声をかけたから、相手はかなり手応えを感じているようす。
「ご、ごめんなさい。わたし、涼く……涼花に浮気されて、一発殴ってやらないと気が済まないんです」
とっさに思いついた嘘で取り繕った。
教科書はドラマだけど、今の状況だと有効ではないだろうか?
「うわ、あいつこんな子どもにまで手出してんの?」
子ども……。傷つくなぁ……。
「まあそういうことなら、今がチャンスだな。その道の先でくたばってるから」
「教えてくださってありがとうございます」
よしと心の中でガッツポーズしつつ、頭を下げてお礼を言い、この場を離れた。