【移行予定】擬似的なシンメトリー
裏路地をまっすぐ進み、突き当たりを右に折れたところで地面にへたり込む人を見つけた。
うわ、ひどい。ボロボロだ。
「涼くん!」
「……?」
全身傷だらけ血だらけの涼くんはわたしを見た瞬間、虚ろだった目を大きく開いた。
「なんでおまえ……」
「大変。早く手当てしないと」
「さわんな」
涼くんに触れようとしたら手をはたかれてしまった。
変わらないな、その目。
顔はあどけなさがなくなり大人っぽくなっていて、体つきも骨ががっしりして筋肉ができ男の人に成長しているけど、目だけは変わらない。
威嚇するケモノのような鋭い目つき。赤く光るその目つきだけで人を殺せそうだ。
「チョーップ!」
「ッて! なにすんだ!」
軽く頭にチョップをお見舞いすれば怒鳴られた。
「強がらない。このままだと涼くん死んじゃうよ。見殺しにしたわたしは殺人者。わたしをムショにぶち込む気?」
「自分の心配かよ」
「ていうか涼くん、わたしのこと覚えててくれたんだね」
しばらくぶりに会ってもわたしだとわからないんじゃないかと思っていたけど、そうじゃなくてちょっとびっくり。