【移行予定】擬似的なシンメトリー
「だれだよおまえ」
「今さら遅いよ。柏井絢音。涼くんの幼なじみで、涼くんのファーストキスの相手。一緒にお風呂に入った──」
「ああもう、わかったから。だまれ」
やっぱり覚えてるじゃん。
「さあ、病院かどこか手当てできるところに行こう」
「だからさわん──」
「またチョップを食らいたいの?」
「……はあ」
涼くんがため息をついて口を閉ざしたので、わたしは涼くんを肩に抱いて立ち上がった。
ずしんと涼くんの体重が乗っかる。思ったより重い!
「そんなんで歩けんの?」
「歩けます。ちょっと黙っててもらえますか?」
腰を曲げながらゆっくり歩く。ひとまず、この裏路地を抜け出して。
「病院はどこにあるかわかる?」
「あっち」
涼くんに案内されて病院へ向かう。
着いたのは、病院ではなくアパートだった。
「病院じゃないじゃん! わたしの苦労を返してよ」
「手当てできるとこって言ったから、俺ん家」
「あっ、ここ涼くんのお家? それならいっか」
「……おまえ、マジで言ってる?」
「ん? 大マジだけど?」
涼くんはまたため息をついた。
だんだん涼くんの重みにも慣れて、階段も楽々と上がれるようになった。