鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
プロローグ
プロローグ

 甘い甘い、とろとろの砂糖水の中にいるみたい。

 私は尊敬してやまない彼、本城(ほんじょう)玲司(れいじ)社長にベッドの上で深い深いキスをされながら、そんなふうに思った。

 だって秘書である私は、彼にとって利用価値があるから妻に選ばれたにすぎない。
 そう、そのはず。
 そのはずだったのに……。
 ゆっくりと離れていく柔らかな唇。

「心春、かわいい」

 どうしてこんなふうに、甘い声で名前を呼ぶの。

 会社での彼から、こんな甘い声を聞いたことがない。
 クール、冷徹、怜悧、鉄仮面。有能すぎて人の気持ちがわからない。
 これらは全て、彼が向けられてきた言葉だ。

 なのに、ふたりきりになったとたん、彼は私に甘すぎる一面を見せてきた。
 ちゅ、と汗ばむ額にキスが落ちてくる。
 見上げれば、精悍なまなざしが柔らかく細められる。
 同時に再び唇が重なった。
 彼から与えられる大人のキスに、そしてその先にある快楽に慣れ始めた、淫らな身体。

 恥ずかしくてたまらないのに、玲司さんは嬉しくてたまらないという顔をする。

「ほら、もう少し頑張れ」

 そう言う口調と声は優しいのに、彼の指や手はあられもないところに触れ始めていて。

「も、だめ……」

 快楽から逃げようとした身体を、玲司さんは簡単に押さえつける。

「こら、わがままを言うな」
「わ、わがままなんかじゃ」

 そう抵抗する私に、彼はキスを何度も落としてくる。

「俺はね、心春。君の素直な気持ちが知りたい」
「気持ち……?」

 快楽に落ちていく意識で、必死に問い返す。玲司さんは笑った。
 気持ち。気持ち? そんなの決まってる。

「尊敬してます」
「それから?」
「お支えし、たい……んんっ、いつも」
「他には?」
「いつも、憧れて」
「……足りない」

 そう言って彼は私にむしゃぶりつくようなキスを落とす。
 口内全部を舐め上げられるような、いつもの彼からは考えられないほど性急で手荒なキス。

 なのに、それが気持ちよくて嬉しくて。
 彼に求められることが、心臓が打ち震えるほど誇らしくて。
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