鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 社長は微かに目を見開いたあと、ワインを呑みほしなぜだか不敵に笑った。
 私は心臓を鷲掴みにされた気分になって内心「キャッ」と叫ぶ。

 なんですか社長、そのちょっとワイルドな微笑みは……? かっこよすぎるんですけど!

 ふ、とやっぱり野性味のある感じで社長は笑って目を細め、口を開いた。

「こう来るとは正直想定外だ。やはり君は面白い」
「面白い、とは」
「それからよくわかった」
「なにが、でしょうか」

 疑問ばかりが降り積もる私に、社長は鷹揚に微笑む。

「君が死ぬほど鈍いということだ」

 社長はそう言ってグラスをテーブルに置き、腕を組む。
 思案顔も美しい……じゃない、困らせているのは私だ。

「しゃ、社長。申し訳ございません……!」
「いやいい、はっきり言わなかった俺が悪い。けれど、そうだな……正攻法ではかえって逆効果か」
「はあ」
「そうだ。逃げられないようにしてしまおう」
「い、いかな社長とはいえ、犯罪には手をお貸しできません」
「いや心配するな。ちゃんと落とすから」
「首を?」

 ひい、と悲鳴を上げた私を見て、社長は肩を愉快そうに揺らした。

「本当に君は飽きない」
「恐悦至極に存じます……が、その、一体」
「ああ、そうだな。では単刀直入に言おう。心に決めた人というのは」
「いうのは」
「君のことだ、森下心春さん」

 私はぽかんとしてしばしフリーズしたあと、小さく首を傾げた。
 そうして肩から力を抜いて頬を緩める。

「ふふふ、さすが社長、CEOジョークですね。いつなんどきもユーモアを忘れないその姿勢、不肖森下見習っていきたく存じます」
「ジョークではないよ」

 鷹揚ささえ覚えるほどにゆったりと笑い、本城社長はじっと私を見つめる。

「俺が結婚相手として心に決めていたのは、君だ。君しか考えられない」
「……社長の決定に差し出口を挟みたくはないのですが、少々お考えを伺っても」

 ふ、と社長は目を細めた。少し悲しそうに、寂しそうにも見えてそわそわしてしまう。
 尊敬してやまない本城社長にこのような顔をさせて、情けなくて眉を下げた。

「その、違うんです。どう考えても、私のような人間が社長の伴侶としてふさわしいと思えずつい口を挟んでしまいました。申し訳ございません」
「どうして。逆に、俺の方が君にふさわしくないのかもしれない。それでも、俺は君と結婚したい」
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