鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
三章


【三章】

 目が覚めると、すっかり明るくなっていた。

「はっ」

 私は大きく息を吐いて、ベッドで身体を起こす。
 隣に玲司さんの姿はない。慌てて時計を見てみれば、すでに十時半を過ぎていた。

「寝すぎました……っ」

 今日は一日、ホテルでのんびりしようと事前に言われていた。
 とはいえ、こんなに寝過ごすとは……玲司さんにご迷惑をかけてしまった。朝食はもう食べただろうか?
 急いで服を着て、と思って視線をうろつかせる。
 けれど広いベッドの上には真っ白な寝具だけだった。
 昨夜、服はどこで脱いだんだっけ……? と、頬に熱が集まる。

「わ、私、玲司さんと……っ」

 両手を頬に当てて、大きく目を瞬いた。
 もちろん夫婦になるのだから、きっといつかは「そういうこと」もするのだろうと想像していた。
 だけれど、結婚して初日にあんなふうに情熱的に求められるだなんて、想像もしていなかった。

「どうしよう」

 思わずひとりごちた。今までと同じように接することができるかな。
 どきどきと胸が高鳴る。もちろん今までもときめいてきたのだけれど、もう数えられないほどにときめき尽くしてきたのだけれど、なんだか……婚約したあたりから、ちょっとずつちょっとずつその「ときめき」の種類が変わってきていて、それが昨夜で決定的に形を変えたような気がした。

「起きたのか」

 がちゃりとドアを開き、玲司さんが寝室に入ってくる。微笑む彼はすでにしっかりと着替えていた。シンプルなシャツとジーンズ。シャツの袖はまくられていて、腕の筋肉がお昼近い午前中の陽射しで影を作る。

「あ、お、おはようございます……!」

 必死でシーツをかき集め、身体を隠した。玲司さんは「ふ」と笑いこちらに歩いてくる。

「そういう仕草もほんとうにかわいらしいな」
「か、かわいくなんか」

 玲司さんは優しく笑う。
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