鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
「君が自分がかわいいと自覚するまで、耳にたこができるくらい言い続けよう」
「そ、そんな」

 耳にたこが! そんなふうになるまで聞かせられ続けて、私の心臓は持ってくれるのだろうか。
 ひとりあわあわとしている私に、玲司さんは「ああそうだ」と言ってバスローブをとってきてくれた。

「あ、あの、洋服は……」

 ベッドの端に置かれたバスローブを見つつ、そう尋ねてみる。玲司さんは柔らかく目を細めた。

「朝食を部屋に頼むから、もう少しリラックスしているといい」
「でも」

 いいから、と玲司さんはすこし意地悪そうに、でも爽やかに笑う。

「それとも着せてやろうか」
「自分で着ます!」

 私は叫び、バスローブを玲司さんに取られまいと抱きしめた。

「そ、その。着替えますので、すこし……」
「俺がいたらダメか? 昨日は全部見せてくれたのに。あんなあられもないところまで」
「れ、玲司さん……っ」
「はは、冗談だ」

 片手を上げて玲司さんは部屋から出て行く。ああ、もう、恥ずかしくてたまらない。でも妙にくすぐったくて、甘い。
 バスローブをしっかりと着てベッドから降りる。

「う」

 思わず呻いて腰を撫でた。
 あ、あんな姿勢であんなことされると思ってなかった……っ!
 思い出すとまた頬が熱くなるから、必死で頭から生々しい記憶を追い払う。
 ああもう、朝だというのに私はなにを想像しているの!

 顔を手で仰ぎながらリビングルームに向かう。アンティーク調の家具で統一されたそこに、玲司さんの姿はない。ふとドアのほうから――といってもドアをひとつ隔てているけれど――物音がした。

「ちょうどよかった。いま朝食が届いたんだ。あられもない君の姿が見られるのが嫌で、配膳は断った」

 そう言って、ホテルマンのように銀のサービスワゴンを押して彼が部屋に入ってくる。
 ぽかんとした。次の瞬間、跳ねるみたいに駆け寄った。
 玲司さんになにをさせているの、私は……!
 彼の役に立つことこそが、私の矜持、私の誉れ! なのに!

「代わります!」
「いやだ」

 さらりと玲司さんは言って口角を上げた。

「さあベッドに戻るといい。俺のお姫様」
「おひ……?」

 耳が壊れたかもしれない。目を瞬く私の頬に、玲司さんがキスをする。

「まったく、かわいいな」
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