鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 喉元で低く彼は笑う。
 心臓が肋骨から飛び出るくらいに破壊力のある笑顔だった。
 かっこよすぎる上に、かわいすぎる。
 この人、私を笑顔で殺しにきている……!

 彼はこんなふうに笑うのだと、玲司さんをクールで不愛想だと思っている会社の人たちは知らないだろう。

 なんだか、玲司さんを独占しているような気分になってくる。
 きゅんとしすぎて思考能力を奪われた私は、ただ玲司さんに促されるままベッドに戻……って、あれ?

「朝食なのでは」
「ここで食べるんだ」
 
 玲司さんはベッドを示す。
 私は小さく息を呑む。なにそれ、映画みたい……!
 明らかに喜びが顔に出ていたらしい私に、玲司さんはどことなくほっとした様子を見せた。

 玲司さんがセッティングしてくれたベッド用のテーブルの上に、次々と朝食が並べられていく。みずみずしい橙色のフルーツジュース、定番のオムレツ、数種類の生ハムとウインナー、ナッツが混ぜ込んであるスープからは甘い香りがする。特に目を惹いたのが、卵とフレッシュな野菜たっぷりのガレットと、みずみずしいトマトや、日本ではあまり見かけない少し分厚いハムが挟まったサンドイッチだ。パンの色も真っ白ではない。全粒粉でも使ってあるのかな? ――と、違う!

「れ、玲司さん。朝食は」
「まだだ。一緒にいただくよ」

 そう言って私の横に座る。もちろん料理もふたりぶんちゃんとある。

「申し訳ございません。配膳までお任せして――もしかして、朝食かなりお待たせしたのでは」
「いや、俺も起きてそう時間は経っていないんだ。――昨日は遅かったからな」

 そう言って彼は私の首筋をくすぐる。注がれる視線がやけに艶を帯びたもので、思わず頬を熱くしてしまう。
 ふ、と玲司さんが笑う。

「顔が赤いぞ」
「だ、だって」

 私は挙動不審ぎみに目線を泳がせる。そんな私に玲司さんはキスを何度もしてくる。

「すまない、かわいらしくて止まらない」

 そう言って目を細める彼の目があまりに熱いもので、腰のあたりが甘く疼く。慌てて視線をテーブルに戻した。どきどきと鼓動が速まっている。

「あ、えっと、そういえばなんでガレットなんでしょう」

 要は蕎麦粉のおかずクレープ。美味しいし好きだけれど、たしかフランス料理だ。

「スロベニアは主食のひとつが蕎麦なんだ」
「ええっ」
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