鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
玲司さんにお兄さんがいるのは婚約前からもちろん知っている。
現在はデザイナーをされている誠司さんだ。ファッションに疎い私でも名前を知っていたくらいだから、相当の有名人だ。
まさか玲司さんのお兄様だとは夢にも思っていなかったけれど。
それにしても、と内心首を傾げた。
お仕事モードのときと同様に冷徹なまなざしとクールな雰囲気。……とても家族にむけられるものだと思えなかった。
なにかあったのかな。
踏み込まない方がいいのかな。
頭の中でぐるぐると悩みながら通話をする玲司さんを見つめている間に、通話は切れたようだった。
「おい兄貴、そんな急に……切りやがった」
私は目を瞬く。玲司さんのそんな言葉遣いは初めて聞いた。まるで高校生くらいの気安い雰囲気の口調。少しほっとした。お兄さんに対して壁はあるものの、嫌いだとか恨んでいるだとかそんなわけではないようだった。年齢が十歳離れているそうだから、私の想像する「兄弟」とはすこし関係性が違うのかもしれない。
玲司さんが顔を上げ、微かに困った表情を浮かべる。
「心春、すまない。実は兄が、どうしても挨拶がしたいと」
「え、も、もちろん私もです。なかなかお会いできなくて申し訳なく思っていて」
「あの人が忙しいせいなんだから、君が気に病む必要はない」
そう言ってから、不服そうに腕を組む。
「ここまで来るそうだ」
「え」
私はぽかんと玲司さんを見つめる。
「ここまで……って。お兄様、ミラノでショーがあったんじゃ」
「昨日までな。少しスケジュールに余裕がでたらしい。連絡するのを忘れていて、もうこの近くまで来ているそうだ」
「そうなんですか」
目を丸くする私に、……というよりは独り言のように彼は呟く。
「まったく、勝手なやつだよな」
少し寂しそうにも、羨望が混じっているかのようにも見える表情だった。
その後ほんの数分で、テラスまでウエイターさんに案内され玲司さんのお兄様、誠司さんがやってきた。写真やテレビで見かけたことはあったけれど、実際に並ぶと驚くほど顔立ちがそっくりだった。
ただ、丸い眼鏡をかけていて、玲司さんよりほんの少し背が低く、髪が少しだけ長い。
それを後ろで無造作に結んでいるのが洒脱な雰囲気によく合っていた。
「れーじー! 本当におめでとう」
現在はデザイナーをされている誠司さんだ。ファッションに疎い私でも名前を知っていたくらいだから、相当の有名人だ。
まさか玲司さんのお兄様だとは夢にも思っていなかったけれど。
それにしても、と内心首を傾げた。
お仕事モードのときと同様に冷徹なまなざしとクールな雰囲気。……とても家族にむけられるものだと思えなかった。
なにかあったのかな。
踏み込まない方がいいのかな。
頭の中でぐるぐると悩みながら通話をする玲司さんを見つめている間に、通話は切れたようだった。
「おい兄貴、そんな急に……切りやがった」
私は目を瞬く。玲司さんのそんな言葉遣いは初めて聞いた。まるで高校生くらいの気安い雰囲気の口調。少しほっとした。お兄さんに対して壁はあるものの、嫌いだとか恨んでいるだとかそんなわけではないようだった。年齢が十歳離れているそうだから、私の想像する「兄弟」とはすこし関係性が違うのかもしれない。
玲司さんが顔を上げ、微かに困った表情を浮かべる。
「心春、すまない。実は兄が、どうしても挨拶がしたいと」
「え、も、もちろん私もです。なかなかお会いできなくて申し訳なく思っていて」
「あの人が忙しいせいなんだから、君が気に病む必要はない」
そう言ってから、不服そうに腕を組む。
「ここまで来るそうだ」
「え」
私はぽかんと玲司さんを見つめる。
「ここまで……って。お兄様、ミラノでショーがあったんじゃ」
「昨日までな。少しスケジュールに余裕がでたらしい。連絡するのを忘れていて、もうこの近くまで来ているそうだ」
「そうなんですか」
目を丸くする私に、……というよりは独り言のように彼は呟く。
「まったく、勝手なやつだよな」
少し寂しそうにも、羨望が混じっているかのようにも見える表情だった。
その後ほんの数分で、テラスまでウエイターさんに案内され玲司さんのお兄様、誠司さんがやってきた。写真やテレビで見かけたことはあったけれど、実際に並ぶと驚くほど顔立ちがそっくりだった。
ただ、丸い眼鏡をかけていて、玲司さんよりほんの少し背が低く、髪が少しだけ長い。
それを後ろで無造作に結んでいるのが洒脱な雰囲気によく合っていた。
「れーじー! 本当におめでとう」