鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 誠司さんはテラスに入ってくるなり大きく両手を広げ、玲司さんに抱き着いた。
 そうして頬を両手で包んで「あれ」と目を丸くした。

「ずいぶん大人びたな」
「……最後に直接会ったのは俺が中学生のときだろう」
「まあな! はは、声変わりしているのは電話で知っていたけれど、直接聞くのは変な気分だ! はっはっは」

 底抜けに陽気な雰囲気に圧倒され、私は挨拶をしようとテーブル横に立ったまままじまじとふたりを見つめてしまった。
 兄弟でもこんなに性格が違うんだなあ。

「おお、君が心春さんか!」

 玲司さんはぱっと玲司さんから離れ、今度は私の方にやってきて両手をばっと握る。両手で握手と言うか……。目を白黒させている私に、玲司さんそっくりの顔で快活に微笑んだ。

「玲司と結婚してくれてありがとう! 玲司は本当にかわいいから愛しがいがある! そうだろう?」

 目を瞬く私に、誠司さんは続ける。

「昔から玲司は学業も優秀で、努力家で、真面目一徹で。そんなところが心配でもあったんだけど、そうか」

 誠司さんの両目が潤む。

「こんなに素敵なお嫁さんをもらうくらい、大きくなっていたんだなあ」

 その目からは、はっきりと弟に対する愛情が伝わってきた。
 私は息を吸い、背筋を正した。

「お義兄様! 玲司さんは必ずわたくしが幸せにいたします……!」
「そうか、そう言ってくれるのか。ありがとう……!」
「……ふたりで感動しているところ申し訳ないが、ウエイターが困ってる」

 離れろ、と玲司さんが私と誠司さんをべりっと擬音がでそうな感じで引きはがす。

「ん? ああ、すまないね」

 そう言って誠司さんは微笑み、流ちょうな英語でウエイターさんにワインを注文した。

「スロベニアはワインの国なんだってさ。飲んだ?」

 玲司さんの横に腰かけながら誠司さんは言う。

「食事会でいただきました」
「ああ、ほんとうにごめんね。式には間に合わなくとも食事会にはと思っていたんだけれど、スケジュールが厳しくてね……、ん、ありがとう」

 ウエイターさんからワイングラスを受け取る誠司さんに、玲司さんは軽く眉を寄せた。

「また昼間からそんな重そうなやつを」
「まあまあ、そんなお堅いことを言うなよ。ほらこれ、心春さんに」

 誠司さんはそう言って持っていた紙袋から箱を取り出した。ちょっと大きい。お礼を言って開けてみれば、綺麗な青のストールだった。
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