鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
「それ、うちの新作。日本未発売だからレアだよ。色はサムシングブルー意識して青にしてみたんだけど、どうかな」
「わ、うわ、あ、ありがとうございます」

 そもそも誠司さんのブランドのアイテムは、洗練されていてなおかつ遊び心満載なところもあって人気が高い。当然お値段だって高価だ。ひたすら恐縮する私に、誠司さんは「巻いてみてよ」と気楽そうに笑った。

「は、はい」

 とりあえず適当に首に巻く。薄手なのに暖かい。これは秋口から大活躍しそうだ……とストールの柔らかな触り心地を堪能している私に、誠司さんははにっこりと笑い言った。

「うん、かわいいよ」

 ストレートな言葉だった。目を瞠る私と、無言でコーヒーを飲み干す玲司さん。誠司さんはにこりと笑って立ち上がった。

「さて、会えてよかった。今からパリでね、悪いけれどここで」
「あ、は、はい。わざわざありがとうございました!」

 立ち上がり頭を下げる私と、「気をつけろよ」とぶっきらぼうに言う玲司さんに手を振って誠司さんは去っていった。

「……悪かったな。騒がしいんだ、兄は。昔からずっと」
「いいえ! 明るくて良い人ですね」

 こんな素敵なものまでいただいてしまったし、とストールを外しながら言うと、玲司さんはじっとストールを見つめて呟く。

「気に入ったのか、それ」
「もちろんです!」
「……そうか」

 そう言って玲司さんは湖の方に目を向けた。きらきらしい湖の色は、このストールの青によく似ていると思った。
 その後ホテルに戻り、戻ったと思えばすぐにベッドルームで組み敷かれた。

「玲司さん?」
「心春。かわいい。俺の方が心春のことをかわいいと思ってる」
「……なにかありましたか?」

 少しだけ、ほんの少しだけ表情が焦燥を滲ませているような気がして、玲司さんの頬に手を伸ばす。
 玲司さんは微かに眉を下げ、そのまま私にキスを落としてきた。

 再び抱かれ、激しく貪られ、何度も意識を飛ばしかけた。
 その間ずっと「かわいい」と言われ続けて、私はなんだか不思議な気持ちになる。

 もしかして玲司さんの言うかわいいには、他になにかきっと、素敵な意味があるんじゃないかって。
 それがわかれば、この胸のときめきが以前とは違うときめきに変わった理由にも気が付けるような、そんな気がした。

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