鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 快楽から逃れようとシーツを握って逃げようとした私を玲司さんは抱きしめなおし、押しつぶすみたいに抱え込んでしまう。そうしてぶつけられる欲が、愛情が、身体の快楽以上に嬉しくてたまらない。

「心春、かわいい……」

 掠れた低い声が、信じられないほどにときめきを加速させる。そのまま半ば意識を手放した私に、彼は何度も「愛している」と囁いた。
 頭の芯が甘く痺れてしまう愛情にたっぷりと包まれ、慈しまれる日々。




「ほんっと、愛されてるよねー」

 浦田さんに言われて目を瞬く。
 ローテーションでのお外ランチタイム、いつものように浦田さんとカフェでランチをしていたときのことだった。
 玲司さんに愛されているのは、面映いけれど認める。というか認めざるをえないというか、なんというか。
 でも……。

「どうしたんですか、急に」
「ん? ほら気がついてない? ここ」

 首を傾げつつ、渡された手鏡で首筋を見る。

「あっ」

 小さく叫んでしまった。なにしろキスマークがあったのだから。

「あばばばば」
「なによそれ」

 苦笑されつつ、私は小さなバッグに畳んで入れていたストールを取り出す。誠司さん、玲司さんのお兄さんにいただいた青のストールだ。

「もう」

 首をぐるぐる巻きにして呟くと、浦田さんは「わ」とストールを見つめる。

「それすっごく素敵な色」
「でしょう。誠司さんからいただきました」

 親戚であるなら知っているだろう、とお義兄さんの名前を出すと、浦田さんは「ん?」と小さく眉を下げた。

「……なにか?」
「いや、仲直りしたんだと思って」
「仲直り?」
「誠司さんって、家のことほっといて出奔したから……多分そのせいだと思うんだけど、一時期玲司くんと冷戦みたいになっててね。玲司くんが中学生くらいだったかな」

 私は目を瞠る。
 そういえば、玲司さんが言っていた。最後に会ったときは中学生だったって……。

「……もしかして、あまり仲良くは」

 玲司さんの冷たい表情を思いだす。

「うーん、出奔前はそうでもなかった、かな……? 十歳離れてるから喧嘩もないし。小さい頃はよく誠司さんに遊んでもらったしね、あたしも」
「ああ、明るい方でした」
「でしょ、表裏なくあんな感じ。ただ誠司さん急に出て行って、めちゃくちゃゴタゴタしたから。急に玲司くんが後継者になっちゃったし」

 頷きつつ、少し納得した。
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