鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 私は乃愛ちゃんからのちくちく言葉に耐えていた。
 ちくちく言葉、小学校の先生に使っちゃいけないって教わらなかった??
 玲司さんからの信頼と愛情がなかったら折れかけてる……! 雑草魂あるから耐えられるけど!

 それにしても、高校の時も気が強かったけどパワーアップしてるなあ。
 よく乃愛ちゃん、『あたしサバサバ系だから口悪いんだ、ごめんねえ』って言ってたな、と懐かしく思い出す。

「あ、ごめん嫌味とかじゃなくて客観的事実ね」
「ううん、大丈夫、ほんとのことだと思うし」

 私は首を振る。秋なんだか夏なんだかわからない九月のはじめ、私は乃愛ちゃんにランチに誘われたのだ。
 少し迷ったけれど、浦田さんも来てくれるとのことで受けた。いつも浦田さんと行くパン食べ放題のカフェだ。「新原さんのこと探りたい」と意気軒昂だった浦田さんがトイレに立つやいなや、こんな感じのちくちく言葉が始まったのだ。

「だよねえ?。高校のときだってさ、痛すぎる勘違いしてたしねー。あれ、すっごくウケた」
「あの時はごめんね。乃愛ちゃん、私が勘違いなんかして嫌だったよね」

 少し前ならきっとグサッときていた言葉もすっかり平気だ。
 ちゃんと謝ると、乃愛ちゃんはなんだか逆にイラっときたようだった。ちょっと焦る。

「え、えっと、乃愛ちゃん。その」
「あっごめえん、気にしてないよ。てか、今は勘違いとかしてなあい?色々と~」
「うん!」

 玲司さんからの「かわいい」は素敵な意味の「かわいい」ってちゃんとわかってるから、勘違いなんてもうしない。微笑む私を見て乃愛ちゃんは鼻白んだ。

「……てか、あれ、ネックレスかわいいね」
「ありがとう」

 玲司さんにもらったネックレスを手で触れる。それを乃愛ちゃんはまじまじと見たあと、ハッとした顔をした。

「それってさ、あそこの新作……?」

 乃愛ちゃんが言ったブランドは、確かに紙袋にあったブランド名だった。
 おずおずと頷くと「わー!」と手を合わせる。

「お願い! つけさせて!」
「えっ」

 私はびくっとみじろぎする。

「ちょっとくらい、いいでしょ?」

 乃愛ちゃんの目はネックレスに固定されている。その目ははっきりと「それ欲しい」と書いてあった。

「えっ、と。ごめん、これもらったもので……その」
「旦那さん?」
「うん、そう」
「じゃあいいじゃん、いくつでも買ってもらえるでしょ? いいなあ玉の輿」
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