鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
ムッとした顔をしながら、乃愛ちゃんは私にパスタのお皿を返してきた。
……あ、一番食べたかったイクラのところ全部食べられちゃってる。
鮭とイクラのクリームパスタなのだった。
こういうのって文句言いづらいんだよね……って、人生で乃愛ちゃん以外からされたことないんだけれど。
「はあ? なにそれ」
「いいじゃないですか。いっただきまーす」
乃愛ちゃんは自分のパスタを上品な仕草で食べ始める。
私は眉を吊り上げている浦田さんに目配せをした。事実がどうなのかはまだ分からないまでも、疑いをもたれ調査対象となっている乃愛ちゃんに警戒されてもいいことはない……と、思う。
ランチが終わり、同じエレベーターに乗り込む。でも浦田さんは降りなかった。
「法務に用事あんのー」
乃愛ちゃんにそう言った浦田さんは、結局社長室のある階で降りた。
「もしかして、なにか掴んだんですか」
「んー。いやね、ほら気心が知れた心春ちゃんの前では油断してぽろっと何か口にしないかなって……これ」
ミニバッグから浦田さんが取り出したのは、薄型の音声レコーダーだった。
「ていうか、分かってたけどあいつ性格最悪ね。営業部では総スカンよ」
「そ、そうなんですか?」
「すっごい見下してくる感じ……と、玲司くん」
ちょうど社長室から玲司さんが出てきて、私たちを見つけた。浦田さんがさっきのことを説明すると「そうか」と返事をしてから私をじっと見る。
「……どうしたんですか?」
「いや、新原になにかされてないか」
「まさか」
苦笑して首を振る。
「警戒しすぎです」
「いや、ああいう輩は、警戒しすぎくらいでちょうどいい。よし、いま少し時間があるからそれを聞いてみよう」
「あの、でも、そんな内容のことはなにひとつ……」
「かなり調査が進んでいてな。心春が気が付かなかった何らかのキーワードを口にしている可能性がある」
納得しつつ記憶をたどる。ううん、やっぱりそんな話はしていないと思うけれど。
社長室に入り、応接セットのソファにローテブルを挟んで座る。私は浦田さんの横だ。なんとなく、仕事中は玲司さんと線を引いておくべきと思ったのだ。
そうして録音を聞き終わった玲司は前髪をかきあげたあと、私の手を取って強く言う。
「ここまで色々言われたのだから、『なにかされた』に入る」
「は、入りますか?」
……あ、一番食べたかったイクラのところ全部食べられちゃってる。
鮭とイクラのクリームパスタなのだった。
こういうのって文句言いづらいんだよね……って、人生で乃愛ちゃん以外からされたことないんだけれど。
「はあ? なにそれ」
「いいじゃないですか。いっただきまーす」
乃愛ちゃんは自分のパスタを上品な仕草で食べ始める。
私は眉を吊り上げている浦田さんに目配せをした。事実がどうなのかはまだ分からないまでも、疑いをもたれ調査対象となっている乃愛ちゃんに警戒されてもいいことはない……と、思う。
ランチが終わり、同じエレベーターに乗り込む。でも浦田さんは降りなかった。
「法務に用事あんのー」
乃愛ちゃんにそう言った浦田さんは、結局社長室のある階で降りた。
「もしかして、なにか掴んだんですか」
「んー。いやね、ほら気心が知れた心春ちゃんの前では油断してぽろっと何か口にしないかなって……これ」
ミニバッグから浦田さんが取り出したのは、薄型の音声レコーダーだった。
「ていうか、分かってたけどあいつ性格最悪ね。営業部では総スカンよ」
「そ、そうなんですか?」
「すっごい見下してくる感じ……と、玲司くん」
ちょうど社長室から玲司さんが出てきて、私たちを見つけた。浦田さんがさっきのことを説明すると「そうか」と返事をしてから私をじっと見る。
「……どうしたんですか?」
「いや、新原になにかされてないか」
「まさか」
苦笑して首を振る。
「警戒しすぎです」
「いや、ああいう輩は、警戒しすぎくらいでちょうどいい。よし、いま少し時間があるからそれを聞いてみよう」
「あの、でも、そんな内容のことはなにひとつ……」
「かなり調査が進んでいてな。心春が気が付かなかった何らかのキーワードを口にしている可能性がある」
納得しつつ記憶をたどる。ううん、やっぱりそんな話はしていないと思うけれど。
社長室に入り、応接セットのソファにローテブルを挟んで座る。私は浦田さんの横だ。なんとなく、仕事中は玲司さんと線を引いておくべきと思ったのだ。
そうして録音を聞き終わった玲司は前髪をかきあげたあと、私の手を取って強く言う。
「ここまで色々言われたのだから、『なにかされた』に入る」
「は、入りますか?」