鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
「ん? 癒される癒される」
「うそだあ……んんっ、玲司さんのえっち……っ」

 ……具体的になにがあったかは、一生秘密にしておきたい。

 とまあ、そんなふうに過ごしているうちにあっという間に時間は過ぎ、視察の日がやってきた。
 その間にも、藤木さんや浦田さんを始めとした営業部、それから採用に関わった人事部の面々に、玲司さんが直接ヒアリングを行った。

 この件に関しては箝口令をしかれ、さらに私は乃愛ちゃんと関係性が深すぎるという理由で、あえて調査から外してもらった。

 かわりに会長付の香椎係長がこの件に関してはサポートに入ってくれた。
 だから、乃愛ちゃんの件がどうなっているのかは分からないけれど……とにかく、早く解決するといいなと思う。


 二時間ほどで着陸した飛行機から降り、温泉旅館からの迎えのハイヤーに乗る。黒塗りの高級外車、それも広々としたセダンで、私はちょっとびくびくしてしまった。

「どうした?」

 不思議そうな玲司さんに苦笑を返す。
 きっといつも乗せてもらっている玲司さんの車の方が高級車に分類されると思うのだけれど、そこはそれ。
 生まれも育ちも弩級の一般庶民には、なかなかラグジュアリーな雰囲気には慣れない。
 窓の外はすっかり暗闇に包まれていた。

「疲れていないか?」

 心配そうに聞かれて、こくんと頷く。
 移動は今回もファーストクラスをとってもらったし……と、もちろん経費にはしないらしい。
 要は、私への温泉旅行のプレゼントだった。素直に嬉しい。

 お礼になにができるかなあ、と夜の街を眺めながら考える。
 なにしろ玲司さんの信条は欲しいものは手に入れる、なので私が今更モノをプレゼントしても微妙だろう。

 というか、玲司さん御曹司なのに……いや、御曹司だからこそか、下品に散財するような使い方はしない。
 持っているものはどれも超一流のものだけれど、それは見栄ではなくて本当に質のいいものを選んでいるだけなのだった。うーん。
 ……ここまで悩むのならば、いっそ思い切って聞いてしまうのがいいかもしれない。

「心春、どうした?」
「あの、玲司さん……なにか欲しいものはありませんか」
「欲しいもの?」
「はい。今回旅行にまで連れてきてくださいましたし、いつもお世話になっていますし。玲司さんにお礼がしたいんです」
「礼、か。そんなものどうでもいいよ。夫婦なんだし」

 それに、と玲司さんは続ける。
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