鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 私の横で玲司さんが噴き出した。私はムッと唇を尖らせて彼を見上げる。ちょっと頬が熱い。そんな私を見て、玲司さんはにこやかに私の頭を撫でた。

「悪い。かわいかったから」

 私を見てくる、優しくて穏やかな瞳。
 ……本当に、普段冷血だのクールすぎるだのと言われているのが嘘みたいだ。

「あらあ、仲が良かとですねえ」

 女将さんの言葉にハッとする。恥ずかしくて慌てる私をよそに、玲司さんは飄々とした様子で口を開く。

「そうでしょう」
「本城様のほうが惚れてらっしゃるのでしょ」
「そうなんです。惚れぬいて、少し前にようやく口説き落としたところでして」
「あらあ、ラブラブ。よくお似合いやしね」

 女将さんは微笑みながら、綺麗な所作で緑茶を淹れてくれた。
 私はというと、妙に頬が熱い。ラブラブだって……!
 お似合い、だって。
 胸がきゅんとする。少なくとも、不釣り合いだとは――リップサービスもあるのだろうけれど――思われていなさそうで安心したのもある。でも、玲司さんの言葉にきゅんきゅんしてしまったのだ。惚れぬいて口説き落としたなんて、他の人に堂々と言えてしまうくらい大切にされているんだって……。

「どうした?」
「玲司さんにきゅんとしてしまいました」

 小さい声でそう返す。

「……惚れたか?」
「惚れなおしました」

 囁くようにそう答えると、玲司さんはとっても嬉しげにする。
 女将さんが退室した部屋で、向かい合って出汁茶漬けをいただく。薬味も何種類も用意されていて、いろいろな風味が楽しめそうで嬉しい。

「うっわあ、おいしい……!」

 もぐもぐと食べている私を、玲司さんはじっと見つめている。

「……なにか?」
「いや?」

 玲司さんは片方の眉を軽く上げ、微笑んだ。

「君は何をしていてもかわいいなあと」

 そう言う彼こそ、すごく端正でかっこよくて、いちいち私をときめかせてしまうのだ。

「明日は昼からか」
「はい、明日こちらに入られる方がほとんどなので」
「じゃあ少しゆっくりできるな」

 優しく言われて頷いた。

「玲司さん、最近この工場の件や、新原さんのことで明らかにオーバーワークですから。せめて明日のお昼まではゆっくりされてください」
「オーバーワークのつもりはないけれど」
「明らかに人ひとりの仕事量ではないですよ」

 言いながら「あれ?」とも思う。
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