鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
「そういえば、玲司さんはなにをお願いしたんですか?」
「ん? 神社でか?」

 はい、と頷く私に玲司さんは笑った。

「心春の健康」
「……え、わ、私の健康?」

 思わず目を丸くして、それからふふふと笑ってしまう。

「玲司さん、商売繁盛の神様になにお願いしているんですか」
「いいだろう? 商売の方は俺がなんとかするけれど、心春の健康は神頼みしたって頼みたい」

 私はふわふわしてむず痒い気持ちになる。
 とっても大切にされている、とっても慈しまれている。
 それを強く感じるから。

「心春は?」

 そう聞かれて、苦笑した。

「新工場建設がうまくいきますように、それから玲司さんが元気で幸せでいてくれますようにって」

 今度は玲司さんがきょとんとして、それから大きく噴出した。

「ふたつも?」
「ふたつもです。わがままだったでしょうか」
「いや」

 玲司さんは笑って私の頬を撫でる。そうして、続けた。

「君はもう少しわがままでいてくれてもいいよ」





 視察から帰ってきて、玲司さんの仕事はほんの少し、ほんの少し落ち着いた。
 乃愛ちゃんのことも最近動きがないようで、ヒアリングもされていない。
 ただ、なんとなく考え込んでいることがあるので、おそらくかなり深い水面下でなにか動いているのだろうけれど……この件に関してはノータッチでと決めたからなあ。

 そんなふうに思っていた、ハロウィンも近いある日の午後に、広報部の同期から内線がかかってきた。

『ほんっとごめん、森下さん。利用するようでわるいんだけど、ちょっと話を聞いてくれないかな』

 その同期がとても鹿爪らしい顔をして訪ねてきたのは、退勤ギリギリの時間だった。
 手にはカフェの紙袋。新作のデザート系パフェを携えて、しずしずとやってくる。

「なにか魂胆がありそうな予感」

 はっきり告げると、「そうなの!」と彼女は私に抱き着いた。

「わ、零れる零れる!」

 ハロウィン限定パンプキンクリーム増し増しクリーム系ドリンクがっ。
 ごめんごめん、と同期は横のデスクの椅子に座り、改めて私に向けて手を合わせてきた。

「実は次のCMのことなんだけれど」
「ああ、世界で活躍する日本人シリーズ?」
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